Syntactic Theory

最近は、可変長レコードの型推論アルゴリズムを実装するために基礎理論を勉強している。OCamlと同じ理論に基づいた実装にしようと思い、[Remy92]*1、[Remy93]*2をあたりを読んでみた。これらを読み進めていく過程でSyntactic Theory(統語論)なるものがありそれを理解していないと先に進めないことがわかった。しかたがないので、東京まででかけて「HPSG入門 制約にもとづく統語論と意味論」ISBN:478280086X、試しに読んでみた。

高校の時に英文法の授業で、SVOとかSVCというものがあったことを覚えていないだろうか。直感的に言うと、Syntactic Theoryとはあれの表現力を高めて形式化したものである。例えば、「キムは○○を食べた」という文の○○には何が入るかを考えてみる。日本語を理解している人ならば○○には食べ物が入るということが容易に想像できる。それは、「食べる」という動詞が食べ物を目的語に取るということを知っているからである。別な言い方をすると、この文の読み手は動詞「食べる」が「食べ物」という属性を持った目的語を取ることから○○には食べ物という属性を持つ名詞が入ると推論したと言える。これは、○○と動詞「食べる」の関係が持つ制約からの推論であり、Syntactic Theoryはこうした語と語の関係を形式化し議論することに主眼が置かれている。

話がだいぶ逸れてしまったが、このSyntactic Theoryがレコード型の推論とどう関係しているのかというとどちらも制約問題をUnificationアルゴリズムによって解決しているという点で類似している*3。特に、HPSGで扱われる統語素性は代数的構造を持ちレコード型と共通点が多い。しかし、残念なことに私が買った本は入門書だったので形式化が中途半端で終わっていたorzしかも、自然言語についての解説書なのでプログラミング言語には適応されない話題のほうが多かった。ざっと3分の2くらいが自然言語の話だろうかorzそういうわけで、せっかく買った本なのだが、早くも本棚の奥深くにしまわれることが確定した。さよなら3700円orz

*1:Didier Remy, Type Inference for Records in a Natural Extension of ML

*2:Didier Remy, Syntactic Theories and the Algebra of Record Terms

*3:Unificationを使わないSyntactic Theoryもあるようだがここでは触れない